himac APPLICATION
No.68 DECEMBER 1994
  • 機種:高速冷却遠心機用SRR6Y形/エルトリエータロータ
  • エルトリエータ細胞分離システムを用いてウニ16細胞期胚の大・中・小割球を分離した例

目的

受精卵の極性とその調節性の問題について、受精卵あるいはごく初期の胚の中に局在している物質、特に転写因子や成長因子がこの問題の鍵となっていることが明らかになってきています。
このためウニの受精卵においては、その極性が外面的に現れる16細胞期胚の大割球(macromere)・中割球(mesomere)・小割球(micromere)(図1参照)を生きたまま大量に分離し、各々の遺伝子を解析することが重要と考えられます。そこで、このウニ受精卵の16細胞期胚の大・中・小割球の分離に日立エルトリエータ細胞分離システムを使用し、その分離精度を確認しました。


ウニ受精卵の卵割の様子

実験方法


(1) ウニ16細胞期胚

・バフンウニ(Hemicentrotus pulcherrimus)
・ムラサキウニ(Anthocidaris crassispina)

(2) 細胞数

2.6×107細胞(1.6×106胚)

(3) 分離用バッファ

Ca2+欠如人工海水(含1mM EGTA)

(4) 試料調製法

(1)ウニ卵を1mM 3−アミノ−1,2,4−トリアゾール存在下で受精する
(2)受精膜を除去する
(3)16細胞期胚まで海水中で飼育する
(4)割球解離用バッファ(Ca2+,Mg2+)欠如人工海水(含1mM EGTA))で2回洗浄する
(5)割球解離用バッファ(Ca2+,Mg2+)欠如人工海水(含1mM EGTA))8mlに懸濁する

(5) 分離条件

フラクション 回転速度
(rpm)
流量
(ml/min)
分画時間
(min)
分画量
(ml)
0*2) 800 4.9 - -
1 800 7.5 6.7 50
2 800 9.3 5.4 50
3 800 10.5 4.8 50
4 800 11.6 4.3 50
5 800 13.1 3.8 50
6 800 14.5 3.4 50
7 800 15.9 3.1 50
8 800 17.1 2.9 50
9 800 18.9 2.6 50
10 800 20.3 2.5 50
11 800 21.8 2.3 50
12 800 23.5 2.1 50
13 800 26.1 1.9 50
14 800 28.6 1.7 50
15 800 32.4 1.5 50
合計 - - 49.0 750

*2) フランクションNo.0はサンプル導入の条件

分離結果

(1) 各フランクションにおける細胞サイズ分布の様子

図2はフランクション1〜15の全フランクションを合計した細胞サイズ分布であり、図3は各フランクション群の細胞サイズ分布です。全フランクションの合計細胞数は2.3×107であり、これは導入細胞の90%にあたります。
また、大・中・小割球の比は1:2:1と なり、エルトリエーション中に特定の割球が壊れてないことを示しています。
図3の結果は、フランクション1〜4で小割球(micro),フランクション8〜10で中割球(meso),フランクション14〜15で大割球(macro)がそれぞれ90%以上の純度でで得られることを示しています。

(2) 胚葉特異的遺伝子発現のノーザンブロッテイングによる解析

図4は分離後の各割球における胚葉特異的遺伝子発現をノーザンブロッテイングにより解析したものです。正常発生では、中割球は外胚葉,大割球は外・内・中胚葉,小割球は中胚葉に分化します。図3より、エルトリエータ分離後の大・中・小割球はそれぞれの発生運命に対応する胚葉特異的遺伝子を発現していることが確認されました。

分離した細胞のサイズの分布
各フランクション群における細胞サイズの分布と顕微鏡像
分離後の各割球のノーザンブロッティングによる解析

以上のことから、16細胞期胚の大・中・小割球をエルトリエータを用いて分離することができました。
また、分離された各割球は、発生における胚葉特異的遺伝子発現に関しても、割球本来の性質を保持していることが確認されました。

結論

今回の実験結果により、エルトリエータ細胞分離システムを用いて正常な発生能を保持した大・中・小割球を生きたまま大量に分離できることが示されました。
これにより、分離した各割球に特異的に発現する遺伝子を検索することができるようになり、胚葉分化あるいは体軸形成に関わっている遺伝子を解析する系を確立することができました。

本アプリケーションは、
金沢大学薬学部 大場義樹 教授、
同 教養部 山口正晃 助教授、
両先生からご提供頂いた資料をもとに作成したものです。詳細につきましては下記文献を御参照下さい。、
Yamaguchi M.,Kinosita T.,Ohda Y.,Develop.Growth & Differ., 36, 381(1994).